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『思い川』


お父さん、あの戦争が終ってからもう二十七年になります。

 ということは、お父さんが死んでしまってから、二十七年になるということです。

「自分はこの地に、到着したのではない。あらかじめ目ざした場所に到着したのではなくて、考えてもみなかったところへ漂着したのに過ぎない」――。敗戦の年に亡くなった父親の友人を訪ねて当時の話を聞き出そうとする「父への手紙」(群像・1972年7月号)、今は異国となった生まれ故郷・北朝鮮の旧制中学校の同窓会に初めて出かける「釈王寺」(文學界・1974年10月号)、亡くなってから初めて夢に現れた父親の姿に思いを巡らす「父の夢」(海・1974年9月号)、近所の綾瀬川へ家族で土筆を取りに出掛けながら故郷の川・龍興江での記憶をたどる「思い川」(群像・1974年8月号)――。筆者自身の原体験をモチーフにした四編による連作長編小説。単行本『思い川』(講談社・1975年2月24日刊)、文庫『思い川』(講談社文庫・1978年5月15日刊)に所収。

◉もくじ

 「父への手紙」

 「釈王寺」

 「父の夢」

 「思い川」

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